夕方、多肉パトロールをしてたんです。
家の裏の多肉を見て回り、家の前に行くと…
女の子2人を連れた若いママが多肉を眺めてました。
で、ママの方と目が合って、お互い軽く会釈をしたんです。
ママは、美人さんです。
芸能人で言えば、北川景子似?
田舎の北川景子さん?
似てます…
田舎の…がつきますが、ホントきれいな方でした。
これから「景子ママ(仮名)」と呼ぶことにしましょう。
子供は、幼稚園児の女の子と3歳ほどの妹でした。
お姉ちゃんの方は、近くの幼稚園指定の体操着を着てたんで、あの幼稚園に通う園児で間違えないでしょう。
すると、景子ママから「あのぉ… これ、売っていただけないですか?」って言うんです。
これというのは、これ…
この寄せ植えは、素焼き鉢をペイントして、そこに多肉を数苗植え込んだ寄せ植えです。
日当たりの良い場所で日光浴させてました。
道路際の一番目立つところに置いてたので、歩道を歩いてた時にこの多肉達が目に入ったんでしょうか?
実は今度、また出店イベントがありまして、処分に困ってる多肉を売ろうと思い、先日から小さな寄せ植えを10数鉢作ってたところなんです。
「あ、いいですよ」と返事したら、景子ママは娘のお姉ちゃんの方に「ね? どれがいい?」って聞いてたんです。
お姉ちゃんは、「んんん……」と寄せ植えの鉢をじぃーと眺めてましたが、あまり反応がありません。
「ママ、これがいい!」とか、「これがかわいいね」とか、「これが好き!」とかあまり自己主張をしない子のようです。
で、景子ママが、「これにしようか…」と指差したのが、これ。
葉先がほんのり赤くなってぷっくりしてる乙女心が植わってる寄せ植えでした。
これ、真冬だともっと赤くなってかわいいんだけど、暖かくなり、雨も多くなってきて、色が褪めてきてるですよね…
他の苗もそうです、虹の玉も、火祭りも、センペルさんも、エケベリア系の多肉も段々と色が褪めてきてます。
もっときれいな色の時に見てほしかった…
「おいくらですか?」と言うんですけど、鉢自体が小さいし、植わってる苗は普及種ばかりだし、多肉をかわいがって、もっと好きになって欲しいから、「どうぞ、どうぞ、無料でいいですよ。ただで持って帰って!」と言いたかったです。
しかし、後々のことを考えたら、それはちょっと厳しいかな…と判断。
幼稚園のママ友の間で、「あそこのお宅、多肉をただでくれるんですよ」って噂が広まったら、次に来る人にも無料にしなきゃいけないし、この人にはお金をもらって、この人にはただで…と言う不公平感が出ちゃいます…
それに、今度の出店イベントで買ってもらう人がいるのに、フライングでタダで渡してたら、買ってもらう人に対して失礼ですよねぇ?
申し訳ないけど、ここはちょっとばかりお代をいただこうと、「これ、200円でいいですよ。」と返事しました。
200円、高いでしょうか???
今度の出店イベントでは、もう少し高く売ろうと思ってるんですけど???
すると、景子ママ、「え…っと… これ、水をほとんどやらなくてもいいんですよね?」って聞いてきたんです。
もしかして、まったくの多肉初心者さん?
多肉植物は放っておいても育ちますけど、初めは多肉植物の特徴をある程度理解していないと、最初のうちは絶対に枯らしてしまいますよ…
多肉に必要なのは、光! 風! 水!
この3つの要素が必要ですが、どこまでご存知なんでしょう???
「水はあまり必要ないですけど、水をやる時はたっぷり上げてください。これからの時期はほとんど水やりしなくて大丈夫です。 で、外に置いてたら、秋ぐらいになると、またきれいに色づいてくれますよ」って答えたんです。
すると景子ママ、「あのぉ… 家の中に置いておいたらダメですか???」と聞いてきました。
「部屋ですか? ずっと?」
「はい…」
ダメ!ダメ!ダメ! ぜぇーーーーたいにダメ!!!!
これからの時期、特に危険です!
蒸し暑い部屋の中で育てるなんて、一発で全部の苗がダメになっちゃいます!!!
冷房が効いてる部屋でも、絶対にNG!です。
ここはやんわりと、「部屋はダメですねぇ… こういう植物は外で育てた方が、苗はしっかり締まるし、色づきもいいんですよ。部屋だとひょろひょろに育って、いずれは枯れます」と教えてあげたんです。
で、「外は? 庭とかに置いておいたら?」と聞くと、「庭、ないんです…」と言う返事。
庭がない…
ない…? あらら…
「じゃ、玄関先の外とか… ポーチとかは?」と聞くと、「ないんです…」の返事。
玄関がない???
玄関がないってことはないでしょうが、玄関の外側に置ける場所がないってことでしょう。
えーーー? どうしましょ?
どうすればいい?
気に入った寄せ植えを持って帰って育ててもらいたいけど、育てる場所がない…
いや、育てる場所は一応あることはあるんだけど、多肉の管理には最も厳しい環境である…
どうすれば、多肉を長く、かわいく、立派に育てられるんでしょうか?
厳しいなぁ…
「部屋で育てるのは、厳しいかもしれませんね…」ってことを伝えたら、景子ママは「そうですか…」と声がトーンダウン。
幼稚園児の女の子も、態度や言葉には表さなかったけど、口先がほんの少しとんがり、ちょっとだけ悲しい表情になったのを、oyageeは見逃がさなかったんです。
景子ママも多肉に少しは興味があるんだけど、幼稚園児のお姉ちゃんの方が、最近花とか植物に興味を持ち始め、景子ママが「この子に興味があるものを買ってあげ、その知識や才能をもっと伸ばしてあげたい」って思いから、植物をいっぱい置いてるうちに寄ってきたんだ……と勝手に推測しました。
きっと、部屋のテーブルの上とかに置いて、「ほら、葉っぱが出てきたよ!」「あ!葉っぱさんが赤くなってる!」「大きくなったねぇ」って、毎日親子で多肉の成長観察をするんだと思います。
きっと女の子は、「育ててみたいな…」って思っているはず!?
この女子園児の「多肉さんをお部屋で育ててみたい…」って願いを、なんとか叶えてあげたい!!
そしたら、景子ママの方から、「部屋の中でも育てられる、こういうのって、他にありませんか?」って聞いてきました。
部屋で育てられる多肉?
部屋で育てられる多肉??
部屋で育てられる多肉???
「んんん、ちょっと待って…」とその辺に置いてる多肉を片っ端から探してみたんですが、ないんですよ、室内でも育てられる多肉が…
サボテンは?
サボテンは、意外と室内で育てられます。
だけど、幼稚園児がお友達に「あのね、わたしね、サボテンを育ててるの!」って言ってほしくないなぁ。
初めての多肉栽培が、いきなり「サボテン」ですよ?
渋すぎません??
お友達には、「わたしね、かわいい多肉ちゃんを育ててるの」って自慢してほしいんですよね。
それに、サボテンはトゲがあるし、下の子はまだ3歳ぐらいで植物のことが全然わかってないようだから、もし室内に置いておいて、トゲを触ったりして、怪我でもしたら大変です。
じゃあ、丈夫なアガベは?
アガベも室内で育てれそうですが、やはり断然の屋外で管理した方がいい!
それに、アガベがすぐに大きくなっちゃうんで、室内には不向きです。
さらに、幼稚園のお友達に、「わたしね、アガベ、育ててるの!」なんて言ったりしたら、それこそ将来は多肉上級者の「アガベ女子」です!
アガベはもう少し大人になってから…にしてくださいね。
じゃ、サンセベリアは?
サンセベリアは、断然室内栽培に向いてます。
1年中屋内管理でも問題ありません。
サンセベリアがいいかも?と思ったんですが、小さい苗がないんですよ。
今、ちらほらと子株が出てる品種があるので、株分けしてもいいんですが、サンセベリアって姿はあまり面白みがないし、苗も大きくなるだけで特徴はないし、ディスプレイ用や観賞用には適してるけど、育て甲斐はないんではないかと?
「幼稚園児が、いきなりサンセベリア栽培!」…なんて、まだまだ早いような気がします。
夏休みの絵日記が、「サンセベリア観察絵日記」だったら、先生、びっくりするんじゃあないです?
観葉植物はほぼ全品種、室内管理が大丈夫なのですが、欲しいものは小さくてかわいい多肉植物のようなんですよね…
他に室内でも問題なく育つ多肉植物ってないです?
ない… ない… ない…
何かないかと、目を凝らして探し回ったんだけど、1つもありません…
何千、何万とある多肉植物の中には、光が差し込まなくて無風の部屋で十分管理できる品種も中にはあるかもしれません。
だけど、oyaeee、1苗も持ってません…
だけど、この女の子に喜んでもらいたい…
がっかりしたさっきの顔がどうしても忘れられなくて、女の子に笑顔になって帰ってもらいたい…という思いで何とか選んだ品種が……
硬葉系ハオルチアの「九輪塔」と、軟葉系ハオルチアの「ウンビラティコラ」です。
この2つだったら、なんとか室内でも管理できるんではないかと…
だけど、やっぱり外の方がいいんですよね。
冬場は室内でも大丈夫です。
だけど、春から秋ぐらいまでは外に置いて、自然の風に吹かれ、たまにたっぷり水やりした方が、しっかり根が張れるし、株もしっかりするし、害虫もつきにくい。
2苗とも、植わってるのはすごく小さい鉢です。
植物用の鉢ではありません。
100均で買った一人用コーヒーミルクのピッチャーに植え込んでます。
大人のoyageeが持つにはうまく掴めないほど、極小の器。
ままごと遊びに使ったらいいような、オモチャみたいな食器なんです。
こんな小さな容器に植えたのは、出店イベントに出品するためではなく、ミニチュアサイズの多肉を作りたかったんで、とりあえず試しに植え込んでたんです。
植え込んだのが2月頃ですから、4か月ぐらい経過してますでしょうか…
陶器製ではなくAS樹脂製という材質ですので、底穴は電動ドリルで簡単に開けられます。
なので、水やりしても余分な水は外へ流れ出る仕様です。
九輪塔もウンビラティコラもほとんど紅葉しないから、1年中ほぼ緑色のまま…
そして、ほぼこの形。
育てる楽しみがあまりない植物ですが、これを気に入ってくれるでしょうか?
景子ママに、「これだったら、室内でも大丈夫ですけどね…」と言ったら、「かわいい!」と喜ばれ、そして娘に「これにしよっか…」と聞いていました。
お姉ちゃんの方は、人差し指を口元に持っていき、首をかしげながらも、嫌がってはない様子。
景子ママの方から、「これにします。これ、ください」と言う返事をいただき、2点お買い上げ。
景子ママ親子は歩いてきたようなので、ご近所の方のようです。
うちの裏には、アロエのおやっさんやセダムが好きなセダムパパが住んでますが、アロエのおやっさんちもセダムパパんちも以前は田んぼだった場所です。
それが、ここ10~20年で一気に埋め立てられて、住宅地になってます。
そこに〇〇建託とか〇〇ホームの賃貸アパートも、何棟か建ってるんですよね。
庭もない、多肉を外で管理できる場所もないと言ってますので、多分、そのアパートの住人さんではないかと…
そのまま歩いて帰るようなので、鉢が倒れないように容器に入れて、さらに鉢がグラグラ動かないようにプチプチ梱包材の切れ端が近くにあったので、隙間に詰めてあげて渡しました。
これを喜んでくれるでしょうか?
うまく育ってくれればいいんですけど…
親子が帰り、再び多肉パトロールを続けたんですね。
すると、3分後…
景子ママが、「タスケテ、クダサイ…」と笑いながらも、泣きそうな声でやってきたんです。
どうしました???
「この子が転んじゃって…」と言いながら差し出した、さっきの2鉢が…
土はなく、苗は見るも無残に根がむき出し状態に………
アチャーーーー!!!!!
幼稚園児のお姉ちゃんは泣いてはないんで、激しく転んではないようです。
ただ、何かに躓いたのか、足が絡まったのか、妹とぶつかったのかで転び、転んだ拍子に両手で抱えてた容器を落としちゃったんでしょう…
小さな子供に、苗を両手に持たせたらいけないことに気づきませんでした。
子供って、どうしても大事に大事に持ってる手の方が気になってしまい、歩く動作がついついおろそかになりがち…
足元がおぼつかなくて、転んじゃったんでしょう。
まさか、まさか転ぶとは思わなかったから、手提げ袋には入れてあげなかったんです…
持ちやすいよう、いらないレジ袋でも入れてあげようと思ったんだけど、子供って袋にものが入ってることを気にしなくて歩くから、帰った時に中身がぐちゃぐちゃ…ってことがよくありますよね?
「はじめてのおつかい」を見てても、買い物に行った子供が買い物袋を引きずったり、袋を持ったまま思いっきり走ったりして、帰宅した時は中身がぐちゃぐちゃだった…ってよく見るんで、あえて手提げ袋には入れなかったんです。
だけど、まさか転んで、多肉をひっくり返すとは…
ごめん、おじさんが悪かったね…
「きれいに植え込んであげるから、また明日来てくれる?」ってことで、今日のところは帰ってもらいました。
早速、仕立て直します!
まず、ピッチャー型の鉢から苗を取り出して…
根はしっかり張れてたようですね。
よかった…
土を入れていきますが…
その前に、鉢穴をふさぎます。
通常は鉢底ネットを使用するんですが、この鉢は小さいので小石で代用します。
小石と穴にはわずかなすき間があるんで、そこから水が流れ出てくれるでしょう。
次に、粗めの土を入れ…
小さな器だからこそ、水はけが大事。
赤玉土と鹿沼土の細粒に、少々の腐葉土を混ぜた配合土を使います。
あとは、せっかく出てる根が折れないように埋め…
このウンビラティコラ、小さいながらも、すでに子株のウンビラティコラBabyが出てますね。
これも大事に植え込んで…
ハイ、元通りです!
見た目は元通りで問題ありませんが、根は一から… リスタートになります。
うまく根付いてくれたらいいんですけど…
もう1苗、プレゼントすることにしました。
ガステリアも追加します。
ガステリアも室内で育てても、ほぼ問題ないと思います。
ガステリアも、成長期などは本当は外の方がいいんですけどね…
こちらは、ガステリアの小亀姫。
斑入り品種なので「小亀姫錦」なのですが、もしかして「子宝錦」ではないかと?
購入時に「小亀姫錦」になってたんですが、すでに持ってる斑なしの「小亀姫」とは葉の形が違うんですよね…
ま、いいでしょう… 今、子株がたくさん出てきてるので、この1つを同じコーヒーミルクピッチャーに植え込んで、明日、渡します。
形のいいBabyを1つもぎ取り…
あとは、空いてるピッチャーに植え込むだけ。
この3つを、景子ママ親子に渡します。
そうだ! 幼稚園児のお姉ちゃんの方を、これから「小亀姫」と呼ぶことにしましょう。
もらった直後に、転んで鉢をひっくり返し、多肉を落としてしまった小亀姫ちゃん。
どこかの誰かさんと似てません?
oyageeと似てる?
そそっかしいところ、他人とは思えないんですよね…
と言って、わが子ではありませんから!
小亀のお姫様、これを喜んでくれるでしょうか?
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「小亀姫なんて名前、いやー!」…なんて言わないでくださいね。